fate
社長が長々と話をしている。
寝てしまいそうになるけど、どうにか眠気をこらえた。
「これが終わればやっとご飯だね」
里香ちゃんがこそこそ話しかけてくるので、あたしは声を出さずにうなずく。
着慣れない振袖に、背筋が痛くなってきた。
早く終われーーー。
念を送っていると、やっと社長の話が終わり、ぞろぞろとパーティー会場に移動した。
全社員300人弱。
当たり前だけど、顔と名前が一致しない人ばかりだ。
普段、電話の声を聞いているだけなので、支店の人の顔を見て挨拶をして回るのは新鮮だった。
薫ちゃんが料理をどんどんお皿に盛っていくので、ひっくり返したらどうしようかと冷や冷やしてしまう。
「これ美味しいよー」
「あ、うん」
ローストビーフを口に運びながらも、在原さんの姿を探してしまう。
でも、あんまりベタベタ話しかけてたら周りから怪しまれるかも。