fate
彼女のとこになんか、行ってほしくない。
ずっと一緒にいたい。
抱きしめている腕を、離したくないよ。
だけど、引き止めることはできない。
「そろそろ行くよ」
「……うん」
おとなしく体を離すと、
いつもの余裕たっぷりな笑顔で、あたしの頭をなでてくれる。
「またね」
車を降りて小さく手を振ると、在原さんも微笑みながら手を振り返す。
テールランプを見送ってから空を見上げると、
雲の間に少しだけ星が見えた。
体が急に冷えていく。
あんなに熱かったのに……。
吐く息だけは、相変わらず白くて熱い。