fate
「雨、やまないね……」
沈黙に耐えられなくなったあたしは、口を開いた。
「うん、そうだね。
帰りも霧出てると思うから気をつけて」
「うん…」
帰りたくないな。
でも仕事あるし。
抱きしめられてるから顔が見えないけど、どんな表情してるんだろう…。
「――ほんとは帰したくないけど」
「え?」
ゆっくり体を離して顔を見ると、今まで見たことない表情の在原さんがいた。
切ないような。
悲しいような。
いつもの余裕はどこに行ってしまったの?
「ごめん……。
俺、はるかちゃんを傷つけてばかりで。
――最低だ」
「なんで?
あたしは傷ついたりしてないよ。
一緒に居てくれて幸せだよ」
精一杯に微笑んで、在原さんの頬に口づける。