fate
優しさ
キーボードを打つ手を止めて、前を見ると在原さん。
この状況にも慣れてきたけど、たまに目が合うと焦ってしまう。
「ん?」
って優しく微笑まれると、何も言えなくなってしまうから。
だから気づかれないように。
ちょっとずつ盗み見る。
ストーカーみたいかも。
「上田さん、ここの計算式間違ってるよ」
「あ、はいっ。直します」
そんなちょっとした幸せな時間を邪魔する台詞。
この課長、ちょっと苦手だ。
エクセルに、ひたすら数字を入力していく。
まぁでも、こんな単調な作業、実は向いてるのかもしれない。
何かと仕事が早いって誉められるし。
誉められると伸びるタイプみたい。