fate

日曜。

また家の近くまで迎えに来てくれたので、
ベンチシートに乗り込む。


「寒いねー」

そう言いながら、いつものように差し出された左手。


「……」

「あ、ごめん!」

在原さんは慌てて指輪を外して、
財布に仕舞った。

あたしは気にしていないフリをして、右手を重ねる。

「どこ行くの~?」

上目遣いで問いかけると、いつもの優しい笑顔で答えてくれる。

「どこがいい?」


そんな話をしても、行くところは決まってるんだ。
人目につかなくて、二人っきりになれるところ。




「ごめんね、いつもこんなとこで…」

シートベルトを外しながら、苦笑いしている。

「ううん。いっぱいくっつけるからいいよ」


ドアを開けて冷たい空気の中に出て行く。



「あっ――」

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