fate
カシャン、と音がして、
黒い携帯が地面に転がった。
在原さんは慌ててそれを拾い上げる。
「あ、切れた」
「え?」
見ると、バーバリーのストラップが切れていた。
なんか…不吉。
「まぁしょうがないかー」
そのまま携帯をポケットに突っ込んで、
あたしの右手を取ってエントランスに向かう。
エレベーターに乗るなり、優しく抱き寄せられた。
「寂しかった?」
「うん……。
もう、会えなくなるかと思った」
「……ごめんね」
否定、してくれないんだ。
そんなことないよって言ってほしかった。
さっきまで、彼女のこともこうやって抱きしめてたの?