fate
部屋に着くと、持っていた紙袋を広げた。
「ちょっと早いけど、バレンタイン」
「え、まじ?手作り?」
在原さんは目を丸くしている。
「うん」
ハンドミキサーが見つからなくて、自力でメレンゲを泡立てたガトーショコラ。
おかげでちょっと腕が筋肉痛になった。
でも、頑張った証拠だから心地いい痛み。
「すごい嬉しい。
手作りとか久しぶりだ~」
彼女は手作りしてくれないのかな。
戸棚を適当に開けていくと、カップやスプーンを見つけた。
在原さんにはブラックを、あたしは甘いコーヒーを淹れた。
フォークがなかったのでスプーンを手渡すと、ガトーショコラが口に運ばれていく。