fate

「あのパチンコ屋を右です」

道案内しつつも、恥ずかしくて窓の外ばかり見ていた。
いつもの道も、隣に在原さんがいると思うと、全然違う景色に見えてくる。

熱のせいでぼんやりしているし、夢の中みたいにふわふわしていた。




「あ、ここです」

「はいよー」


簡単に車庫入れを済ませて、エンジンを切る。


「ありがとうございました…」

「いえいえ、当然ですから。
ちゃんと薬飲んで寝ときなよ?」

「はい…。
あ、渡部さんも!
ありがとうございました」

後ろからついて来ていた渡部さんにも頭を下げて、二人を見送った。




ああ。せっかく二人だったのに、もっと話せばよかった。




< 17 / 186 >

この作品をシェア

pagetop