fate
「あのパチンコ屋を右です」
道案内しつつも、恥ずかしくて窓の外ばかり見ていた。
いつもの道も、隣に在原さんがいると思うと、全然違う景色に見えてくる。
熱のせいでぼんやりしているし、夢の中みたいにふわふわしていた。
「あ、ここです」
「はいよー」
簡単に車庫入れを済ませて、エンジンを切る。
「ありがとうございました…」
「いえいえ、当然ですから。
ちゃんと薬飲んで寝ときなよ?」
「はい…。
あ、渡部さんも!
ありがとうございました」
後ろからついて来ていた渡部さんにも頭を下げて、二人を見送った。
ああ。せっかく二人だったのに、もっと話せばよかった。