fate
走り出してしばらくしてから、在原さんが口を開いた。
「髪、切ったんだね。
短いのもいいじゃん」
胸まで伸びた髪を、いきなりボブにしたから「失恋したの!?」って里香ちゃんたちに突っ込まれたなぁ…。
でも、こんなときにまで、なんでおだてるんだろう。
変わらない優しい笑顔に、
頭をなでられるのかと身構えてしまった自分が悔しくなる。
笑えばいいのか、泣けばいいのか、怒ればいいのかも分からず、黙ったままナビの画面をぼんやり見つめていた。
矢印が、海沿いの道を辿っている。
ハンドルを握る左手には、前とは違う新しい指輪が光っていた。
――結婚したんだね。
口に出す気も起きなくて、またナビの画面に視線を戻した。