fate
外はいつの間にか静かになっていて、
波の音が響いていた。
「どっか行く?」
初めての夜のときと同じ台詞に、
思い出し笑いしそうになった。
「どっかって?」
嬉しくなってニヤニヤしながら聞き返す。
「じゃあ……俺の部屋?」
「うん、行く!」
もう、こそこそ会う必要もないんだね。
堂々と、昼でも夜でも会えるようになるんだ。
夢みたいだけど、夢じゃない。
だって、お互いの左手に光る指輪があるから。
外からは、またロケット花火の音が響き始めて、
はしゃぎ声も聞こえてくる。
ティッシュで顔を拭いてミラーを見ると、ひどい顔が映って思わず吹き出した。
そんなあたしの行動を見て、在原さんも笑いながらエンジンをかけた。
そして、差し出された左手に、ゆっくり右手を絡ませた。
【END】