fate

その男性が椅子に座ったので、メニューを持って行こうとすると、
在原さんに腕を掴まれて引きとめられた。


「きゃ…っ」

驚いて一瞬バランスを崩したあたしに、
あ、ごめん、と在原さんは呟いた。


「あの客、ちょっと問題ありなんだよね。
だから俺が行ってくるよ」

そしてあたしの手から
メニューとおしぼりが乗ったトレーを取って、歩いて行った。

そう言えば、赤い口紅の営業部の主任は若い営業スタッフとお喋りに夢中で何も手伝ってくれない。

軽く頬を膨らませながら待っていると、在原さんが戻って来た。


「ホットお願いしまーす」

「はーい」

コーヒーをセットすると、それを持ってさっきのお客さんのところに持って行ってくれた。
にこやかな笑顔で対応してるけど。




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