fate
「え…?」
全く予想してなかった言葉に、驚きを隠せないあたしを前にして、
沙耶は平然と続けた。
「なんかね、飲みに行ったとこで知り合った人なんだけど。
最初、知らなくてさ。
好きって言われて、自然にそういうことになったんだけど」
そのあとの言葉がなかなか続かない。
背中を射す太陽がジリジリと痛い。
「この前、『嫁が妊娠した』とか言われて」
「は…何それ―…」
「それで、もう会えなくなっちゃった」
泣きそうな顔をして、沙耶は笑っていた。
「最初から結婚してるって知ってたら、そんなことしなかったのに。
人のものに手出しちゃいけないって分かってるし。
言わないのはズルいよね」
“人のものに手出しちゃいけない”
陽射し以上に、その言葉があたしに突き刺さる。
沙耶の話を聞きながらも、在原さんのことを考えてしまうなんて。
最悪。