fate
聞き間違いだと思って顔を上げると、
在原さんは真っ直ぐあたしを見つめていた。
「なに……」
体が固まってしまって、声が出ない。
「ヤバい。
俺、ほんと…」
かすれたような声の続きは、携帯の着信音にかき消された。
「あ、ごめん俺だ」
そろそろと息を吐き出して、自分が息を止めていたことに気づく。
さっき、何言おうとしてた?
「うん、分かってるって。
大丈夫だよ」
会話の内容は分からないけど、
多分、彼女からの電話だった。
「あたし、そろそろ部屋に戻りますね」
「え、あ…そっか。うん」
何か言いたげな在原さんから視線を外し、左手を見つめた。
光るそれは、あたしを睨みつけているみたいだった。