fate
「在原くん、ちょっと」
課長が声をかけて、応接室に入って行った。
短く返事をして着いて行く在原さんをチラッと見て、パソコンに視線を戻した。
最近、よく上司に呼ばれてるみたいだけど何かあるのかな。
特に気にも留めてなかったけど、しばらくして席に戻った在原さんの言葉に、
またショックを受けることになる。
「俺、来月からK支店に異動なんだって」
「えっ!?K支店ですか…?
しかも来月って…もうすぐじゃないですか!」
「ちょっと前から異動の話はあったんだけど、
何処に行くのかは決まってなくてさ。
さっき決まったらしいよ」
そんな、他人事みたいに言わないで欲しい。
K市と言えば、高速を使ってもここから1時間以上かかる。
教習以外で高速を走ったことがないあたしにとっては、遠い場所だ。
あたしと全然会えなくなりますね。
じゃなくて。
「彼女と、あんまり会えなくなるんじゃないですか?」
「あー…そうだね。
でも仕事だししょうがないよ」