fate

飲み放題の時間が終わり、在原さんがみんなの前に立って挨拶を始めた。


喉の奥が締め付けられるように苦しくて、今にも涙が溢れそうだった。

「―K支店に行っても、よろしくお願いいたします。
まぁちょくちょく本社にも来るので、忘れないでください」

おどけたような笑顔を、あたしは涙をこらえて見つめた。




居酒屋を出ると、少し肌寒かった。

「お疲れ~。
はるかちゃん、目赤いけどどした?」

祥子ちゃんが心配してくれているけど、本当のことなんか言えるわけがない。


「酔っちゃったのかな~?」
笑いながら、在原さんのところへ向かう。


「あ、上田ちゃんお疲れ~」

いつもの笑顔。

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