fate

「上田さん、K支店の在原さんからー」

渡部さんの声に、慌てて受話器を取る。


「お電話代わりました、
業務グループの上田です」

『在原です。お疲れ様です』

久しぶりに聞く声に、ドキドキしながら、
無意味にボールペンを回した。


『これからFAX送るから、内容確認してくれる?
なんかおかしいとこあったら、また連絡ください』


なんだ、仕事の話か。
って、会社だから当たり前なんだけどね。

「分かりましたー。

あ、在原さん!」

『ん?何?』

「今日って…彼女とデートですか?」
できるだけ声を抑える。


『え?違うよ。
今日は彼女も仕事だからね。
塾の先生やってるから、休みもバラバラなんだよねー。

次会うのもいつになるんだか…』


「そうなんですかー。

あ、ではFAX待ってます。
失礼しまーす」

課長の鋭い視線を感じて、無理矢理電話を切った。

私語しちゃってすみませんねー。

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