fate
黒い車のベンチシートに座って、これは夢なんじゃないかってふわふわしている。
「どこ行こっか~?」
「え、どこでもいいです」
一緒に居られるなら…と思いつつ、在原さんの左手を確認して、
指輪をしてないことにホッとする。
でも、彼女の家から来たんだろうな……。
車は海岸沿いの道を当てもなく走って行く。
振袖やドレスを着た人、スーツを着た人が騒いでいるのが見える。
「あ、結婚式があったんだ。いいなぁー」
そこは最近よくテレビでCMされている、海が見えるチャペルが売りの結婚式場だった。
単純に、祝福ムードいっぱいの人たちを見てほんわかした気分になっていた。
「ここ見学来たけど、すげーキレイだったよ」
そんなこと、あたしが聞きたいと思うのかな。
「へぇー…」
どうにか笑って見せたけど、胸が苦しくて言葉が出てこない。
「おし、じゃあちょっと降りる?」
車を停めて、シートベルトを外す在原さんを見て、慌てて返事をする。
「え、はい!」
外の空気は少し冷たい。
けど、天気はすごく良くて、雲ひとつない空と青い海が広がっている。