fate
「…え」
嬉しさと恥ずかしさでごちゃごちゃになる頭の中。
さっきから「え」しか発してないよ…。
在原さんの肩越しに、黒いラブラドールがジャンプしているのが見える。
フリスビーを咥えて尻尾を振りながら、飼い主のところへ走って行く。
何も喋れないでいるあたしに、在原さんは話しかけてくる。
「社員旅行のときも、部屋に来てくれてほんとヤバかった…。
もうちょいで告白しそうだったし、
押し倒すとこだったよ」
「押し倒すって!?それはちょっと…」
やっとあたしがリアクションしたのが嬉しかったのか、笑いながら続けた。
「仕事中も、抱きしめたいとか思ってたし…
――俺ちょっと変態?」
「そんなことないですよ…。ほんと嬉しい……」
行き場を無くして宙をさまよっていた手を、ようやく在原さんの背中に回した。
あったかい…。