僕と彼女とレンタル家族
第13話 「追求」
在過は、自宅に戻ると、玄関で泣きながら立ち尽くす神鳴に問い詰められる。
「ねぇ、いま電話してた人だれ?」
「あぁ、ノウたりんだよ」
「またノウたりん! いつも在君の通知画面、ノウたりんばっかり! 女の子なんでしょ!」
在過は、ノウたりんに関する詳細を説明するべきか迷う。学生時代からの友人で、彼女も信用してくれている在過だからこそ教えてくれた事実。
トランスジェンダー。
将来的には、性転換手術を受けて見た目や声なども女性にする予定がある。現段階で言えば、声も姿も男性なのだが、在過はノウたりんからトランスジェンダーの話を聞いた段階から女性として接している。
男性として接するのは失礼だと考えているからだなのだが、その事実を神鳴に話してもいいものなのか? と言う不安が残ってしまっている。
男性と伝えれば、神鳴は前回同様に確認するから電話やメールすると言い出しかねない。もしそうなった場合、トランスジェンダーとは言え、ノウたりんは女性だ。声が男性なので、神鳴は男性と判断してくれるかもしれないが、ノウたりんを傷つけてしまう可能性がある。
では、女性と伝えてみた場合、神鳴の行動は想像に難くない。ほぼ確実に泣き出し、また母親に連絡をするだろう。在過は難問に直面したかのように脳をフル回転させる。
「ったく神鳴は心配性だなぁ。話してなかったっけ? 同人作家の仲間で、作品の打合せしてたんだ」
「そうなんだ。それで、女の子なの?」
「僕と一緒で、ホラー好きな同類だよ」
「ねぇ! 何で話を逸らすの? 女の子なのか聞いてるじゃん!」
心の中でノウたりんに謝罪をした在過は、これ以上余計なことをすると面倒くさいことになりかねないと判断した。また、もしこれで偏見な意見や友人を馬鹿にするような発言をした場合、彼女だったとしても許してはいけない。そんな決意を持って、在過は伝える。
「ん~。何と言ったらいいか。トランスジェンダーってわかる?」
「性同一性障害のこと?」
「まぁ、そうだね」
「ふ~ん。男だけど、女の子ってことね」
「そういうこと」
「いつも二人で会ってるの?」
「まぁ、僕が神奈川に越してきてからは、月に一回くらいかな。作品の打合せも兼ねて」
「ふ~ん。へぇ~。なら、今後、その打ち合わせに神鳴も行く」
「……え? なんで?」
「一緒に行ったらダメなの?」
「別にダメではないけど。お互いタバコも吸うし、話し合って作業してるとき構ってあげられないよ?」
「……神鳴より、ノウたりん選ぶんだ」
「なぜそうなるの?」
「だって、構ってくれないって言った!」
「そりゃ、話し合いしているときは無理でしょ」
「じゃぁ、会うのやめて」
「それは無理だって」
予想通りの結果に、在過は疲れてしまう。せっかくの休日で、好きな人と過ごせる時間が消えていく。このままでは、母親が来るのも時間の問題かもしれない。在過は、ノウたりんには申し訳ないと感じながらも、今は神鳴を優先した。
「わかった、話し合いで会いに行くときは一緒に行こう」
「ほんと?」
「ほんと」
「わかった!」
自分で涙を拭うと、泣いて充血した瞳で笑った。
「ちょうどいいや、起きたなら夕食作るか。僕はハヤシライス作ってるから、ご飯炊くのよろしく」
「神鳴、ごはん炊いたことない。どうやるの?」
「おぅ……まじか」
「ねぇ、いま電話してた人だれ?」
「あぁ、ノウたりんだよ」
「またノウたりん! いつも在君の通知画面、ノウたりんばっかり! 女の子なんでしょ!」
在過は、ノウたりんに関する詳細を説明するべきか迷う。学生時代からの友人で、彼女も信用してくれている在過だからこそ教えてくれた事実。
トランスジェンダー。
将来的には、性転換手術を受けて見た目や声なども女性にする予定がある。現段階で言えば、声も姿も男性なのだが、在過はノウたりんからトランスジェンダーの話を聞いた段階から女性として接している。
男性として接するのは失礼だと考えているからだなのだが、その事実を神鳴に話してもいいものなのか? と言う不安が残ってしまっている。
男性と伝えれば、神鳴は前回同様に確認するから電話やメールすると言い出しかねない。もしそうなった場合、トランスジェンダーとは言え、ノウたりんは女性だ。声が男性なので、神鳴は男性と判断してくれるかもしれないが、ノウたりんを傷つけてしまう可能性がある。
では、女性と伝えてみた場合、神鳴の行動は想像に難くない。ほぼ確実に泣き出し、また母親に連絡をするだろう。在過は難問に直面したかのように脳をフル回転させる。
「ったく神鳴は心配性だなぁ。話してなかったっけ? 同人作家の仲間で、作品の打合せしてたんだ」
「そうなんだ。それで、女の子なの?」
「僕と一緒で、ホラー好きな同類だよ」
「ねぇ! 何で話を逸らすの? 女の子なのか聞いてるじゃん!」
心の中でノウたりんに謝罪をした在過は、これ以上余計なことをすると面倒くさいことになりかねないと判断した。また、もしこれで偏見な意見や友人を馬鹿にするような発言をした場合、彼女だったとしても許してはいけない。そんな決意を持って、在過は伝える。
「ん~。何と言ったらいいか。トランスジェンダーってわかる?」
「性同一性障害のこと?」
「まぁ、そうだね」
「ふ~ん。男だけど、女の子ってことね」
「そういうこと」
「いつも二人で会ってるの?」
「まぁ、僕が神奈川に越してきてからは、月に一回くらいかな。作品の打合せも兼ねて」
「ふ~ん。へぇ~。なら、今後、その打ち合わせに神鳴も行く」
「……え? なんで?」
「一緒に行ったらダメなの?」
「別にダメではないけど。お互いタバコも吸うし、話し合って作業してるとき構ってあげられないよ?」
「……神鳴より、ノウたりん選ぶんだ」
「なぜそうなるの?」
「だって、構ってくれないって言った!」
「そりゃ、話し合いしているときは無理でしょ」
「じゃぁ、会うのやめて」
「それは無理だって」
予想通りの結果に、在過は疲れてしまう。せっかくの休日で、好きな人と過ごせる時間が消えていく。このままでは、母親が来るのも時間の問題かもしれない。在過は、ノウたりんには申し訳ないと感じながらも、今は神鳴を優先した。
「わかった、話し合いで会いに行くときは一緒に行こう」
「ほんと?」
「ほんと」
「わかった!」
自分で涙を拭うと、泣いて充血した瞳で笑った。
「ちょうどいいや、起きたなら夕食作るか。僕はハヤシライス作ってるから、ご飯炊くのよろしく」
「神鳴、ごはん炊いたことない。どうやるの?」
「おぅ……まじか」