僕と彼女とレンタル家族
第21話 「はじまり 5」
考え、考えて、考え続けて結論を出す。この場を解決する最善は――なんだと。
「ごめん。僕が悪かった。確かに、消したのは僕自身だ。責める言い方をして、申し訳なかった」
――謝罪。
床に正座をして、頭を下げる。謝罪と同時に、昔の苦痛がフラッシュバックする。小学生時代の時に、父親からもらったお小遣いを隠していたことを母親にバレ、騙した罰として土下座をさせられ、冷水のバケツを何度も浴びせられた記憶。
怖い、この人が怖い。ごめんなさい。もう許してください、お願いします。心の中でも謝罪し、在過の根付いたトラウマが、神鳴に謝罪することで戻ってくる。
しかし、その謝罪はするべきではなかった。在過が謝罪してしまったことにより、やはり在過が加害者で神鳴が被害者だと意識づけさせてしまう。
――在過は謝った、やっぱり神鳴は悪くない。なのに、悪者扱いして責めてくるから怖い。
――娘の彼氏が謝罪している。やはり、娘を泣かせて助けを呼ぶほどひどい事をした悪魔だ。やっぱり赦してはいけない。
最善策と思っていた謝罪だが、悪手となってしまったことに在過は気づかない。
「もう、ママが来るからね! まだ電話繋がってるから! 神鳴に何かしても、ママに全部バレるからね!」
悔しさと、苦しみの感情が、在過の涙腺を緩め涙をこぼしていく。携帯画面を在過に見せつけるように突き出し、画面にはママと表示されている。
在過の思考がぐちゃぐちゃな感覚が襲い、神鳴と雷華の会話が頭に入ってこない。なにか話をしているが、なにを話しているのか? 怖い、どうしたらいい。
視界がぐるぐる回り、不安と嗚咽感に襲われる。土下座をする形で、ずっと頭を下げ、深い呼吸を繰り返しながら床を見続けている。在過は、こぼれ落ちる涙を見ながら恐怖に支配される。
母親と言う存在のトラウマを思い出し、言動や行動を理解できない神鳴に不快感。彼女を泣かせたり、不安にさせれば母親が介入してくることは理解していた。だからこそ気を付けていたはずなのだが、そう簡単に自分の気持ちを抑えることができない。
その結果、神鳴に怒鳴る形で怒ってしまい、泣き出してしまう。泣き出した姿を見てすぐに”やばい、やってしまった”と言う危機感は感じていたが、止まれない。
「ずっとそこで土下座されても、不快になるからやめて」
「……」
神鳴からの一言が、また一つ在過の心を砕く。この人は、自分は悪いと思っていないんだと感じる。在過自身で交友関係の連絡先を消したとは言え、誘導したのは神鳴だ。それなのに、彼女はどうして被害者のように振舞うのか? そんな考えが在過の脳内に流れ込む。
冷静ではない状態の考えは危険だが、在過は神鳴を前にして思ってしまう。
そうだ、どうして僕が謝らないといけない?
僕に非はないし、むしろ僕こそが被害者じゃないか。
恋人や夫婦と言う仲において、考えていはいけない感情。どちらが加害者で、どちらが被害者なのか? もともと他人同士である事を念頭に置いていれば、考え方も感じ方も違うことは、すぐにわかること。
もっと冷静になっていれば、解決策はいくらでもあった。
在過は、解決策の選択を間違えたのだ。
「うん、わかった」
神鳴は、ベットから降りると玄関に向かう。鍵を開け、ドアロックチェーンをはずす。玄関の扉が開き、日差しが部屋に入ってくる。在過は、ゆっくりと立ち上が玄関の方へ視線を移す。
頭を撫でている雷華が、奥の部屋で佇む在過を睨みつけている。その表情を静かに受け止める在過は、雷華と言う人物に不快感が溢れ出す。
この人とは会いたくない。この人を見るだけで、嗚咽感と不快感。また、言葉には言い表せない気持ち悪い感情が全身を包み込む。
「もう、だから言ったでしょ? 実家に帰るわよ! あと、詳しい話を聞かせてもらわないと」
「うん……かえる」
二人の会話が、在過を苦しめる。半同棲状態とは言え、神鳴がいなくなってしまう言う状態が、在過の心臓を苦しめていく。行かないでほしい、ここに居てほしいと言う欲求。
――いやだ、一人にしないでくれ。
そんな気持ちが、また在過の瞳から涙を溢れださせる。
「その前に、近藤君。ちょっと話をしましょう」
雷華が部屋の奥までくる。鼻息が荒い雷華は娘を傷つけた在過の前に立ち、殺意が湧くほど目を見開いて睨みつけていた。
「ごめん。僕が悪かった。確かに、消したのは僕自身だ。責める言い方をして、申し訳なかった」
――謝罪。
床に正座をして、頭を下げる。謝罪と同時に、昔の苦痛がフラッシュバックする。小学生時代の時に、父親からもらったお小遣いを隠していたことを母親にバレ、騙した罰として土下座をさせられ、冷水のバケツを何度も浴びせられた記憶。
怖い、この人が怖い。ごめんなさい。もう許してください、お願いします。心の中でも謝罪し、在過の根付いたトラウマが、神鳴に謝罪することで戻ってくる。
しかし、その謝罪はするべきではなかった。在過が謝罪してしまったことにより、やはり在過が加害者で神鳴が被害者だと意識づけさせてしまう。
――在過は謝った、やっぱり神鳴は悪くない。なのに、悪者扱いして責めてくるから怖い。
――娘の彼氏が謝罪している。やはり、娘を泣かせて助けを呼ぶほどひどい事をした悪魔だ。やっぱり赦してはいけない。
最善策と思っていた謝罪だが、悪手となってしまったことに在過は気づかない。
「もう、ママが来るからね! まだ電話繋がってるから! 神鳴に何かしても、ママに全部バレるからね!」
悔しさと、苦しみの感情が、在過の涙腺を緩め涙をこぼしていく。携帯画面を在過に見せつけるように突き出し、画面にはママと表示されている。
在過の思考がぐちゃぐちゃな感覚が襲い、神鳴と雷華の会話が頭に入ってこない。なにか話をしているが、なにを話しているのか? 怖い、どうしたらいい。
視界がぐるぐる回り、不安と嗚咽感に襲われる。土下座をする形で、ずっと頭を下げ、深い呼吸を繰り返しながら床を見続けている。在過は、こぼれ落ちる涙を見ながら恐怖に支配される。
母親と言う存在のトラウマを思い出し、言動や行動を理解できない神鳴に不快感。彼女を泣かせたり、不安にさせれば母親が介入してくることは理解していた。だからこそ気を付けていたはずなのだが、そう簡単に自分の気持ちを抑えることができない。
その結果、神鳴に怒鳴る形で怒ってしまい、泣き出してしまう。泣き出した姿を見てすぐに”やばい、やってしまった”と言う危機感は感じていたが、止まれない。
「ずっとそこで土下座されても、不快になるからやめて」
「……」
神鳴からの一言が、また一つ在過の心を砕く。この人は、自分は悪いと思っていないんだと感じる。在過自身で交友関係の連絡先を消したとは言え、誘導したのは神鳴だ。それなのに、彼女はどうして被害者のように振舞うのか? そんな考えが在過の脳内に流れ込む。
冷静ではない状態の考えは危険だが、在過は神鳴を前にして思ってしまう。
そうだ、どうして僕が謝らないといけない?
僕に非はないし、むしろ僕こそが被害者じゃないか。
恋人や夫婦と言う仲において、考えていはいけない感情。どちらが加害者で、どちらが被害者なのか? もともと他人同士である事を念頭に置いていれば、考え方も感じ方も違うことは、すぐにわかること。
もっと冷静になっていれば、解決策はいくらでもあった。
在過は、解決策の選択を間違えたのだ。
「うん、わかった」
神鳴は、ベットから降りると玄関に向かう。鍵を開け、ドアロックチェーンをはずす。玄関の扉が開き、日差しが部屋に入ってくる。在過は、ゆっくりと立ち上が玄関の方へ視線を移す。
頭を撫でている雷華が、奥の部屋で佇む在過を睨みつけている。その表情を静かに受け止める在過は、雷華と言う人物に不快感が溢れ出す。
この人とは会いたくない。この人を見るだけで、嗚咽感と不快感。また、言葉には言い表せない気持ち悪い感情が全身を包み込む。
「もう、だから言ったでしょ? 実家に帰るわよ! あと、詳しい話を聞かせてもらわないと」
「うん……かえる」
二人の会話が、在過を苦しめる。半同棲状態とは言え、神鳴がいなくなってしまう言う状態が、在過の心臓を苦しめていく。行かないでほしい、ここに居てほしいと言う欲求。
――いやだ、一人にしないでくれ。
そんな気持ちが、また在過の瞳から涙を溢れださせる。
「その前に、近藤君。ちょっと話をしましょう」
雷華が部屋の奥までくる。鼻息が荒い雷華は娘を傷つけた在過の前に立ち、殺意が湧くほど目を見開いて睨みつけていた。