僕と彼女とレンタル家族
第27話 「お見舞い4」
在過と友理奈は居室へ戻ってくる。友理奈はベットに戻り、在過は椅子の横に置いたカバンから、雷華に貰ったプレゼント用のラッピングがされている、正方形の箱を取り出す。重量は軽く、片手で持っても重さがほとんど感じない。
「ねぇねぇ、それが言ってたやつ?」
「そうそう」
「開けるから、ちょっとお待ちよ」
椅子に腰かけ、ラッピングされた包装紙を破っていく。
絵柄などなく、普通の白い箱の上に、三つ折りされた便箋がセロハンテープで固定されている。在過は、セロハンテープを剥がして一度テーブルに置いた瞬間、ほのかに墨汁の香りが漂った。
在過は、箱のフタを開けて中身を確認すると、2種類のカッターナイフが入っていた。
コンビニやホームセンターでもよく見る、黄色いL型カッターとアートナイフと呼ばれる2種類だ。ベットから覗き込もうとしている友理奈の行動に、在過は焦って箱のフタを閉じてカバンにしまう。
「え? なんでしまっちゃうの? うち、まだ見てないよ」
「いや、マジでゴメン。これ、会社に持って行くお土産と間違えちゃったみたい」
「えぇぇ~楽しみだったのに」
「悪い悪い、来週持ってくるから」
「なら、アイスも食べたい!」
「はいはい、買ってくるよ」
「あの二つにパキッて割って飲むやつね」
「……あぁ~アレね」
隠す必要もなかったかもしれないが、在過は無意識にヤバイと感じてしまっていた。そもそも綺麗にラッピングしているお見舞いの品物が、100円ショップでも買えるようなカッターナイフを贈ると言う意図はなんだろうか?
先ほどテーブルの上に置いた三つ折りの便箋が気になり手に取る。
嫌な脂汗がじっとりと湧き出る感覚が襲う。
手紙を開いた中身は、金墨汁を利用して書かれていた。細かく、びっしりと埋め尽くされる文字。軽く流し読みするだけでも、不快にさせる単語がいくつも書かれている。在過と妹さんに向けられた手紙。
「……」
「それなに?」
「ただの説明書。いらないね」
友理奈の興味が手紙に向いたため、在過は適当に誤魔化し手紙をカバンにしまう。ネバつくような気持ち悪い感覚が在過の思考を鈍らせる。
娘を泣かせて、批難されていたはずだったが、妹へお見舞いの品物を用意してくれていると知った在過は、神鳴の母親は僕を認めてくれたのではないか? と言う期待があった。
その期待は、失敗。持ってくるべきではなかった。在過は、ここでカッターナイフを贈ってくる意図は不明だが、明らかにリストカットを連想させようとしている。神鳴に妹がリストカットをしていた事を話しているし、これまでの事を考えると母親も知っているかもしれないと考えた
「ねぇねぇ、それが言ってたやつ?」
「そうそう」
「開けるから、ちょっとお待ちよ」
椅子に腰かけ、ラッピングされた包装紙を破っていく。
絵柄などなく、普通の白い箱の上に、三つ折りされた便箋がセロハンテープで固定されている。在過は、セロハンテープを剥がして一度テーブルに置いた瞬間、ほのかに墨汁の香りが漂った。
在過は、箱のフタを開けて中身を確認すると、2種類のカッターナイフが入っていた。
コンビニやホームセンターでもよく見る、黄色いL型カッターとアートナイフと呼ばれる2種類だ。ベットから覗き込もうとしている友理奈の行動に、在過は焦って箱のフタを閉じてカバンにしまう。
「え? なんでしまっちゃうの? うち、まだ見てないよ」
「いや、マジでゴメン。これ、会社に持って行くお土産と間違えちゃったみたい」
「えぇぇ~楽しみだったのに」
「悪い悪い、来週持ってくるから」
「なら、アイスも食べたい!」
「はいはい、買ってくるよ」
「あの二つにパキッて割って飲むやつね」
「……あぁ~アレね」
隠す必要もなかったかもしれないが、在過は無意識にヤバイと感じてしまっていた。そもそも綺麗にラッピングしているお見舞いの品物が、100円ショップでも買えるようなカッターナイフを贈ると言う意図はなんだろうか?
先ほどテーブルの上に置いた三つ折りの便箋が気になり手に取る。
嫌な脂汗がじっとりと湧き出る感覚が襲う。
手紙を開いた中身は、金墨汁を利用して書かれていた。細かく、びっしりと埋め尽くされる文字。軽く流し読みするだけでも、不快にさせる単語がいくつも書かれている。在過と妹さんに向けられた手紙。
「……」
「それなに?」
「ただの説明書。いらないね」
友理奈の興味が手紙に向いたため、在過は適当に誤魔化し手紙をカバンにしまう。ネバつくような気持ち悪い感覚が在過の思考を鈍らせる。
娘を泣かせて、批難されていたはずだったが、妹へお見舞いの品物を用意してくれていると知った在過は、神鳴の母親は僕を認めてくれたのではないか? と言う期待があった。
その期待は、失敗。持ってくるべきではなかった。在過は、ここでカッターナイフを贈ってくる意図は不明だが、明らかにリストカットを連想させようとしている。神鳴に妹がリストカットをしていた事を話しているし、これまでの事を考えると母親も知っているかもしれないと考えた