僕と彼女とレンタル家族
第37話 「喫茶店2」
たった数日間で肉体的にも、精神的にも疲労していた在過だが、いいタイミングでノウたりんから喫茶店の誘いを受けたことで、気分転換として全力で楽しもうと決める。
ヘアアイロンの電源を入れ、設定温度になるまでのあいだ、歯磨きをするために洗面所に向かう。歯ブラシに歯磨き粉をつけて歯を磨きながら、そのまま台所の棚にあるケトルを取り出し、水を入れてお湯を沸かす準備も同時進行。
「んぅ……これぇにひほ」
冷蔵庫の中から、何種類かストックしてあるコーヒーの粉を取り出してコップに目分量で入れていく。再度、洗面所に向かった在過は、口をゆすいだ後に洗口液を使って仕上げをした。
部屋に戻り、ヘアアイロンで細かいクセ毛部分を修正している間に、ケトルが沸騰した合図の音を鳴り響かせる。
ブクブク音を立てて沸騰しており、熱い水蒸気がケトルと持ち上げようとした在過の右手を包み込む。ゆっくりと、お湯を愛用のコップに注ぐ瞬間も在過は好きであった。淹れた瞬間のほろ苦い香りが鼻孔をくすぐり、早く飲んでくれとでも言わんばかりに、口の中の唾液量が増えていく。
「っん」
部屋に戻りながら、一口ほどコーヒーを飲む。口の中に広がる酸味と苦みを味わい、コクンっと飲み込んだ瞬間の温かさが胸を包み込んだ。
部屋に戻ってくるとテーブルの上にコップを置き、ベットに凭れかかるように床に座る。目の前のノートパソコンを立ち上げ、ミュージックプレイヤーのアプリを起動させる。
【稲川浩二の120分大感謝祭ホラー怪談特集】と書かれた音源を再生する。
コーヒーを堪能しながら目を閉じ、パソコンから流れ出る怪談を聞いている時間は至福。通勤や帰宅時間は勿論のこと、湯船に浸かってゆったりしている時間さえも稲川浩二。しかし、就寝時間の時だけは、続きが気になって睡眠妨害をしてくるため我慢していた。
そんな至福の時間は一瞬で終わりを告げる。
「ふぅ……すぐに終わっちゃうなぁ」
約2時間ほどある怪談話を堪能した在過は、飲み終えたコップを洗って棚に戻す。ノウたりんに11時頃に着くと伝えている為、置時計の時間を確認すると8時52分。
「そろそろ行くか」
クローゼットからショルダーバックを取り出し、本棚から小説を一冊カバンに入れる。耳かけ型Bluetoothイヤホンをそれぞれ左右の耳にかけた。
机の上に置かれた携帯を手に取り、音楽と書かれたアプリを起動。稲川浩二の死の人形、と書かれたタイトルをタップし音源を再生する。濃厚な声色が、恐怖を掻き立てるストーリーとマッチして在過の耳をレイプしていた。
「さーて、ぼちぼち行きますかね」
メッセージアプリからノウタリンを選択し「これから向かうよ」と送る。また、神鳴と書かれたアイコンに触れる。今までのメッセージが表示され、さきほど送ったメッセージを確認した。
【既読】
朝早い時間に送ったメッセージと言うこともあり、絶対にまだ見ていないだろう……そう在過は思っていた。しかし、既読と表示されている文字を見てしまった。
「ふぅ……なんだかなぁ。このまま自然消滅みたいになるのかね」
釈然としない心持ちのまま、在過は意識を【稲川浩二の死の人形】の声に集中して家を出た。
ヘアアイロンの電源を入れ、設定温度になるまでのあいだ、歯磨きをするために洗面所に向かう。歯ブラシに歯磨き粉をつけて歯を磨きながら、そのまま台所の棚にあるケトルを取り出し、水を入れてお湯を沸かす準備も同時進行。
「んぅ……これぇにひほ」
冷蔵庫の中から、何種類かストックしてあるコーヒーの粉を取り出してコップに目分量で入れていく。再度、洗面所に向かった在過は、口をゆすいだ後に洗口液を使って仕上げをした。
部屋に戻り、ヘアアイロンで細かいクセ毛部分を修正している間に、ケトルが沸騰した合図の音を鳴り響かせる。
ブクブク音を立てて沸騰しており、熱い水蒸気がケトルと持ち上げようとした在過の右手を包み込む。ゆっくりと、お湯を愛用のコップに注ぐ瞬間も在過は好きであった。淹れた瞬間のほろ苦い香りが鼻孔をくすぐり、早く飲んでくれとでも言わんばかりに、口の中の唾液量が増えていく。
「っん」
部屋に戻りながら、一口ほどコーヒーを飲む。口の中に広がる酸味と苦みを味わい、コクンっと飲み込んだ瞬間の温かさが胸を包み込んだ。
部屋に戻ってくるとテーブルの上にコップを置き、ベットに凭れかかるように床に座る。目の前のノートパソコンを立ち上げ、ミュージックプレイヤーのアプリを起動させる。
【稲川浩二の120分大感謝祭ホラー怪談特集】と書かれた音源を再生する。
コーヒーを堪能しながら目を閉じ、パソコンから流れ出る怪談を聞いている時間は至福。通勤や帰宅時間は勿論のこと、湯船に浸かってゆったりしている時間さえも稲川浩二。しかし、就寝時間の時だけは、続きが気になって睡眠妨害をしてくるため我慢していた。
そんな至福の時間は一瞬で終わりを告げる。
「ふぅ……すぐに終わっちゃうなぁ」
約2時間ほどある怪談話を堪能した在過は、飲み終えたコップを洗って棚に戻す。ノウたりんに11時頃に着くと伝えている為、置時計の時間を確認すると8時52分。
「そろそろ行くか」
クローゼットからショルダーバックを取り出し、本棚から小説を一冊カバンに入れる。耳かけ型Bluetoothイヤホンをそれぞれ左右の耳にかけた。
机の上に置かれた携帯を手に取り、音楽と書かれたアプリを起動。稲川浩二の死の人形、と書かれたタイトルをタップし音源を再生する。濃厚な声色が、恐怖を掻き立てるストーリーとマッチして在過の耳をレイプしていた。
「さーて、ぼちぼち行きますかね」
メッセージアプリからノウタリンを選択し「これから向かうよ」と送る。また、神鳴と書かれたアイコンに触れる。今までのメッセージが表示され、さきほど送ったメッセージを確認した。
【既読】
朝早い時間に送ったメッセージと言うこともあり、絶対にまだ見ていないだろう……そう在過は思っていた。しかし、既読と表示されている文字を見てしまった。
「ふぅ……なんだかなぁ。このまま自然消滅みたいになるのかね」
釈然としない心持ちのまま、在過は意識を【稲川浩二の死の人形】の声に集中して家を出た。