僕と彼女とレンタル家族
第44話 「家族会議3」
「数日前、大泣きして娘が君の元から帰って来たわけだが、君の口から理由を話してくれるかな? 娘からもママからも事情は全て聞いているから、嘘言ってもわかるからね」
在過は迷っていた。大迦から先手を打たれてしまったからだ。すでに、家族である神鳴と雷華から事情を聞いていると言う発言は、言うならば家族が言った内容と違った場合、在過の発言は全て嘘だとなってしまう。
完全なる負け戦。最初から結果は決まっている。在過の意見は最初からどうでもいい。ただ、娘が教えてくれたことが真実。そして、娘と異なる発言をしたとなれば、より一層在過の立場は危うくなる。
ならば……。
「わかりました。今回、娘さんが泣いてしまったことに関しては謝罪します。しかし、僕自身は何も間違っていないと思っています。すでにご存じだと思いますが、娘さんが僕の携帯に登録されている、知人の連絡先を勝手に削除したことが発端です」
何を言っても信じて貰えないのであれば、喧嘩になろうと関係ない。好きな女性の両親と気まずい関係になっても構わない。ただ一つ、在過は自分が間違っていないと言う主張を言い放つ。
「僕の家族背景は娘さんから筒抜けかと思いますので言いませんが、娘さんが削除した知人は、僕にとって命の恩人とも言える人でした。娘さんとしては、その相手が女性だったことが嫌だと言う事は理解しました。しかし、勝手に消すと言うのは常識的におかしいと思いますので、娘さんに怒ってしまったわけです。」
「ふむ」
「また、その他に連絡を取っている知人がいます。娘さんからしたら、別の女性と連絡を取っていることが許せなかったのでしょう。ずっと気になって、ずっと我慢していたと言われました。私以外の女の子の連絡先を消してほしいと言われたわけです。学友やお世話になった先輩達もいるわけですから、常識で考えて消せないと伝えたところ、泣き出してしまったわけです」
喧嘩とは、少なからず双方に謝罪しなければならないことが必ず存在する。この場で、一方的に神鳴が悪いと言う印象を伝えるとこが得策でないとこは、考えるまでもない。
しかし、一方的にお前が悪いと言う言い方をされ続けていた在過も負の感情は当然ある。なら、在過がこの場で出来る最大の抵抗は、常識と言う言葉を多用することで、神鳴がしたことは常識で考えたらおかしいですよね?と言う陰湿な抵抗をしていた。
在過が事の発端を伝えている状態で、右側にいる雷華がじっとこちらを睨んでいる。その隣に座る神鳴も顔が真っ赤に染まり、瞳に涙を浮かべて俯いていた。
「そのことで喧嘩になってしまい、僕も冷静さを失ってしまったので条件を出して消すことにしました。消す代わりに、僕の望みも一つ聞いてほしいと。娘さんは承諾してくれたので、目の前で全ての連絡先を消しました」
「条件だなんて、まったく神鳴の気持ち考えてないじゃない! あなた、何様のつもり?」
「……」
聞いた内容が納得できない雷華は、軽く腰を上げて神鳴の頭を撫でながら強い視線で在過を攻撃する。しかし、在過の心の内では雷華は後回しであった。口を挟むことなく、じっと在過の瞳を見つめて話を聞いている大迦に対してのみ集中していた。
「条件と言っても難しいことではないはずです。まったく同じお願いをしただけです。現在仕事で関わっている以外の女性全ての連絡先を消しましたので、その逆をお願いしたに過ぎません。正直なところ自分が同じ立場になれば、娘さんも気づくのではないかと思っていました。しかし、娘さんがそれを承諾してくれませんでした。長く付き合っている交友関係を消せるわけがないと。そのことで、自分勝手すぎるだろ?と怒鳴ったのは事実です」
「……」
「それからは、知っての通りだと思います。娘さんが、大泣きしながら母親に連絡を入れたことで迎えに来られました。そして、現在に至るわけです。一つだけ、最初に脅したと言われましたが、僕が娘さんに対して、同じように連絡先を消すように頼んだことが脅しと認識されるのであれば、それは私の捉え方が違うので何も言う事はありません」
「はぁ……。一つずつ潰していこうか」
低く、呆れるように息を吐き出す大迦の瞳を、在過は娘を守る立派な父親に一瞬だけ見えていた。
在過は迷っていた。大迦から先手を打たれてしまったからだ。すでに、家族である神鳴と雷華から事情を聞いていると言う発言は、言うならば家族が言った内容と違った場合、在過の発言は全て嘘だとなってしまう。
完全なる負け戦。最初から結果は決まっている。在過の意見は最初からどうでもいい。ただ、娘が教えてくれたことが真実。そして、娘と異なる発言をしたとなれば、より一層在過の立場は危うくなる。
ならば……。
「わかりました。今回、娘さんが泣いてしまったことに関しては謝罪します。しかし、僕自身は何も間違っていないと思っています。すでにご存じだと思いますが、娘さんが僕の携帯に登録されている、知人の連絡先を勝手に削除したことが発端です」
何を言っても信じて貰えないのであれば、喧嘩になろうと関係ない。好きな女性の両親と気まずい関係になっても構わない。ただ一つ、在過は自分が間違っていないと言う主張を言い放つ。
「僕の家族背景は娘さんから筒抜けかと思いますので言いませんが、娘さんが削除した知人は、僕にとって命の恩人とも言える人でした。娘さんとしては、その相手が女性だったことが嫌だと言う事は理解しました。しかし、勝手に消すと言うのは常識的におかしいと思いますので、娘さんに怒ってしまったわけです。」
「ふむ」
「また、その他に連絡を取っている知人がいます。娘さんからしたら、別の女性と連絡を取っていることが許せなかったのでしょう。ずっと気になって、ずっと我慢していたと言われました。私以外の女の子の連絡先を消してほしいと言われたわけです。学友やお世話になった先輩達もいるわけですから、常識で考えて消せないと伝えたところ、泣き出してしまったわけです」
喧嘩とは、少なからず双方に謝罪しなければならないことが必ず存在する。この場で、一方的に神鳴が悪いと言う印象を伝えるとこが得策でないとこは、考えるまでもない。
しかし、一方的にお前が悪いと言う言い方をされ続けていた在過も負の感情は当然ある。なら、在過がこの場で出来る最大の抵抗は、常識と言う言葉を多用することで、神鳴がしたことは常識で考えたらおかしいですよね?と言う陰湿な抵抗をしていた。
在過が事の発端を伝えている状態で、右側にいる雷華がじっとこちらを睨んでいる。その隣に座る神鳴も顔が真っ赤に染まり、瞳に涙を浮かべて俯いていた。
「そのことで喧嘩になってしまい、僕も冷静さを失ってしまったので条件を出して消すことにしました。消す代わりに、僕の望みも一つ聞いてほしいと。娘さんは承諾してくれたので、目の前で全ての連絡先を消しました」
「条件だなんて、まったく神鳴の気持ち考えてないじゃない! あなた、何様のつもり?」
「……」
聞いた内容が納得できない雷華は、軽く腰を上げて神鳴の頭を撫でながら強い視線で在過を攻撃する。しかし、在過の心の内では雷華は後回しであった。口を挟むことなく、じっと在過の瞳を見つめて話を聞いている大迦に対してのみ集中していた。
「条件と言っても難しいことではないはずです。まったく同じお願いをしただけです。現在仕事で関わっている以外の女性全ての連絡先を消しましたので、その逆をお願いしたに過ぎません。正直なところ自分が同じ立場になれば、娘さんも気づくのではないかと思っていました。しかし、娘さんがそれを承諾してくれませんでした。長く付き合っている交友関係を消せるわけがないと。そのことで、自分勝手すぎるだろ?と怒鳴ったのは事実です」
「……」
「それからは、知っての通りだと思います。娘さんが、大泣きしながら母親に連絡を入れたことで迎えに来られました。そして、現在に至るわけです。一つだけ、最初に脅したと言われましたが、僕が娘さんに対して、同じように連絡先を消すように頼んだことが脅しと認識されるのであれば、それは私の捉え方が違うので何も言う事はありません」
「はぁ……。一つずつ潰していこうか」
低く、呆れるように息を吐き出す大迦の瞳を、在過は娘を守る立派な父親に一瞬だけ見えていた。