俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
思ったことをそのまま口にしていた私は、物憂げな様子の千里さんに気づいてはっとした。彼に父親の話はタブーだっただろうか。いやでも、両親について聞いてきたのは彼だし……。
悶々としていたとき、一瞬窓の向こうに稲妻が走るのが見えて「わっ、雷」と声を漏らした。
そうだ、このタイミングで話を逸らしてしまえ。
「今の、セントエルモの火みたい」
「ああ……それは俺も未経験だ」
突拍子もない発言にもかかわらず、千里さんにも伝わったらしく話に乗ってきてくれた。
セントエルモの火というのは、飛行機の場合は雷雲などに突入すると稀に見られる発光現象。コックピットの窓に稲妻が走る様子は写真や動画で見たことがある。美しく、なんとも不気味な光景なのだ。
飛行機は雷に打たれても特に問題はなく墜落もしないが、過去には信じられないような事故も起こっている。
「昔、セントエルモの火が走って全エンジンが停止したっていう航空事故がありましたよね」
「よく知ってるな」
「個人的に興味があって、そういう事故やインシデントも調べているので」