俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
……乱気流に遭遇してしまった。私の頭に浮かんだのはそんな危うい事態で、眠気も吹っ飛ぶ。
彼女も私に気づいて猫のような瞳を一瞬見開いたあと、つかつかと近づいてきた。ヒールが低めなパンプスでも、元の身長が百五十八センチの私より十センチ近く大きいので威圧感がある。
私はその場に立ちすくんだまま、引きつった笑みを貼りつけてとりあえず挨拶をする。
「宮路さん……! お、おはようございます」
「蒼麻さん」
びしっと名前を口にした彼女に美しく恐ろしい無表情で見下ろされ、私はギクリとして身体を強張らせた。
「この間、空港で天澤さんと抱き合っていたのも、彼が結婚を約束した相手もあなた?」
とても冷静に確認され、冷や汗が背中を伝う。やはりあの場面を目撃していたらしい。
でも、宮路さんと会ったらおそらくこうなる予想はしていた。今度こそはっきり言わなければ。
私は息を吸いながら背筋を伸ばし、彼女を見上げてこくりと頷く。
「……はい。その節は、打ち明けられず申し訳──」
「恐れ入ったわ」
謝ろうとした私を遮って、今度は予想外のひと言が聞こえてきた。