俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
またダメもとで頼んでみようと、水を飲んでいる彼にしっかりと身体を向き合わせる。
「あの、千里さん。ここは妻を助けるためだと思って──」
「絶対行かない」
またしても頼む前に断られ、心の中で〝ですよねー〟と返してがっくりとうなだれた。相変わらず冷たい人だ。
落胆する私のもとへ、冷蔵庫にペットボトルをしまった千里さんがおもむろに歩いてくる。
「なにか聞かれても適当に答えておけばいいだろ。どれが真実でどれが嘘かなんて、他人にわかりっこないんだから」
「うーん、そうか……」
彼の言う通り、別に作り話だっていいのだろう。しかし、嘘をつくには罪悪感がつきまとうから、できればつきたくない。
どうしたものかと小さくため息をついたとき、千里さんが間近にやってきて、私が背中をくっつけているソファの背にゆっくり手をついた。
シャンプーの香りがふわりと鼻先をかすめる。顔を覗き込まれ、プラネタリウムでのキスが脳裏を過ぎってドキリとする。
「実は、俺がつぐみにひと目惚れして、誰のものにもしたくないから結婚させた」
彼の口が紡いだのは唐突な甘いひと言で、さらに心臓が騒がしくなる。