俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
半年以上の時間が経ち、父が亡くなった事実をようやく受け入れられると、たまらない悔しさと無念さが遅れて襲ってくる。やり場のないその憤りは、父に濡衣を着せたメディアに向く。
勉強の合間を縫って、当時真っ先にこの事故を取り上げた週刊誌の記事を探した。二度と見たくないと思っていたそれを発見すると、幸い署名記事だったため記者の名前が載っていた。
「蒼麻 大輔……」
その名前を見たとき、最初に頭に浮かんだ人物──それが蒼麻つぐみだ。
航務課の運航管理補助をしているつぐみは、当時二年目のまだまだ新人で、やる気が感じられる明るい子という印象。
毒を吐く俺にも言い返してくる度胸があり、媚びへつらうような女とは違って面白い。そんな彼女と話すのは単純に楽しかった。
しかしあるとき、父親が週刊誌の記者だと彼女が話しているのを偶然耳にした。
蒼麻という珍しい苗字と、記者という共通点。単なる偶然ではないと、さりげなく話に交ざって名前を聞き出すと大当たりで、正直ショックだった。
彼女は、あの忌まわしい記事を書いた男の娘。そう思うとつぐみまでもが憎しみの対象になってしまいそうで、彼女は関係ないのだと必死に自分に言い聞かせた。