俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】

 こうして同棲を始めたわけだが、俺はあえて思いやりの〝お〟の字も見せなかった。

 生活を保障する代わりに、火事の後始末や諸々の手続き、引っ越しも一切手伝わない。連絡は必要最低限のみだし、すれ違い生活でも合わせようとはしない。元々俺は女性関係もドライだったから、これらはわりと普通のことだ。

 ただ、俺の帰りが遅くなったにもかかわらず、つぐみが手料理を作って食べずに待っていてくれたときは動揺した。そんな健気なことをされて、嬉しくないはずがない。

 だが、一瞬込み上げたその気持ちを掻き消し、俺は心無い態度を取った。あのときの失望したような彼女の顔は忘れられない。

 泉も濁していたように、この薄情さを知ればつぐみは俺を嫌いになるだろう。後悔して悩む姿を父親に見せ、彼も同じように苦悩させてやればいい。

 そんな腹黒い考えも芽生えていた……はずなのに。

 俺のために作ってくれた食事を無駄にするのは当然気分のいいものではなく、結局彼女が寝たあとにいただいてしまった。食欲は十分満たされていたのに、完食するくらいうまかった。
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