俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
翌日からのフライトでも連絡はしないと決めていたにもかかわらず、ずっとつぐみのことが頭の片隅にあり、無意識にスマホを手に取っているときもあった。
そのとき同乗したベテラン機長は既婚者かつ愛妻家だったため、ステイ中一緒に食事をしたとき、〝結婚したら奥さんを大事にしろよ〟という趣旨の話を何度も聞いたせいでもある。
彼の夫婦愛に満ちた話を聞くたび、つぐみに対して不誠実な自分が罪人のように思えてきて、日本へ戻る当日まで悶々としていた。
加えてつぐみを意識させたのは、俺の部屋に乗り込んでこようとした宮路のせいかもしれない。
「天澤さん、一緒にロンドン産のジンで乾杯しませんか?」
ロンドンの有名な蒸留所で作られているブランドの瓶を手に部屋にやってきた彼女に、俺はさも面倒臭い顔を見せていただろう。
「おひとりでどうぞ」
迷いなく告げてさっさとドアを閉めようとするも、彼女は「ひとりじゃ乾杯できないでしょう!」と言い、なかなかに強い力でそれを阻止する。
その後も引き下がらず、さらに色仕掛けにまで及びそうな雰囲気を感じ取ったため、宮路には興味がないのだときっぱりと言い放った。