俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】

「俺には婚約者がいる。俺の心も身体も、そいつにしかやらないよ」


 それを聞いた彼女は目をまん丸にして驚愕し、ようやく攻防を終えたのだ。

 やはり婚約者というのは都合がいい。それは父親の干渉に悩むつぐみにとっても同じはず。

 しかし、彼女は俺とそれ以上の関係を築こうとしているように感じる。改めて健気だなと思うと、心の奥でもどかしさを覚えた。

 そして、ロンドンを経つ数時間前のこと。ブリーフィング前にヒースロー空港の中を歩いていたとき、とあるショップを見て大事なことを思い出した俺は、ついに電話をしようと決めスマホをタップした。


『……ふぁい?』


 しばらくして聞こえてきたのは、つぐみの気の抜けた声。眉をひそめる俺の顔がショーウインドウに映る。


「……酔ってんのか?」
『ん~ん、寝てただけですよぉ』


 それを聞いて、腕時計を見下ろす。ロンドンは午後二時半、日本は夜の十時半頃だ。いつもならまだ起きているからいいかと思ったのだが、タイミングが悪かったか。

『天澤さんが電話かけてくるなんて、いい夢だなぁ』などと言っているから、どうやら寝ぼけているらしい。ふにゃっと笑っている彼女を想像すると口元が緩んだ。
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