俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
予想外の心境の変化に戸惑うも、先ほどまでのもやもやは消えている。耳に彼女の声の余韻を残したまま、俺は新たにできた目的のためにきらびやかなショップの中へ足を踏み入れた。
今回の復路は天候に恵まれず、ヒースロー空港を発つのに一時間遅れ、羽田への着陸時もゴーアラウンドする事態になった。
通常、悪天候のときは機長が操縦する場合が多いが、俺は昇格目前ということもあり、機長が厳しく監督する上で任せてもらえたので感謝している。
当然、安全を第一に考えて操縦していたが、飛行機を降りて緊張と重圧から解放された瞬間に、頭の中を占めたのはつぐみの顔。フライトの直後に女のことを考えるなんて初めてだ。
あいつは今日、どの勤務だっただろう。時間が合うなら、この間の夕食の詫びに一緒に食事をしようか。
柄にもない思考を巡らせつつオフィスに向かってターミナルを歩いていたとき、俺は目を見開いた。
ずっと頭にあった彼女の姿がそこにあるのだから。慣れないことを考えすぎたせいで幻覚を見たのかと思った。