俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
俺はなにもしてあげていないし、彼女が見返りを求めているわけでもなさそうなのに、尽くそうとする理由はなんなのだろう。
「どうしてそこまでできる? 好きでもない男のために」
単純に疑問に思って聞くと、つぐみは少しだけ思案してから口を開く。
「どうせ死ぬまで一緒なら、ふたりで楽しく生きていきたいから!かな」
あっけらかんと笑って答える彼女に、俺は肩の力が抜けるのを感じ、笑いがこぼれた。
彼女はいつもシンプルだ。困ったら素直に助けを求め、結婚するから妻らしくあろうとする。そこには変な思惑も駆け引きもなく、今自分の置かれた状況で幸せに生きていこうとしているだけ。
あれこれ無粋なことを考えている自分がバカらしくなる。このまま、とりあえず普通に夫婦として過ごしてみてもいいんじゃないか。俺は彼女の父親にさえ会えればいいのだから。
つぐみに対しては完全な悪になれないと諦めると心が軽くなり、俺も歩み寄ってみようという気持ちが湧いてくるのだった。