俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】

 厚意を無下にした罪悪感を抱きつつ、つぐみの両親がどんな人かについても尋ねてみた。会う前に、一応大輔の人となりを知っておきたくて。

 当然、つぐみにとっては大切な父親だ。いくら煙たがっていても嫌いなわけではないし、父親が人から恨まれたら悲しいだろう。

 彼女を傷つけたくはないが、大輔への憎い気持ちも消すことができない。

 矛盾した思いを抱えて葛藤していたとき、ふいにインシデントの話になった。つぐみの口から出たのはおそらく父が起こした事例で、俺は内心ギクリとする。

 しかし彼女は、決して当時のメディアのような偏った見方はしていなかった。


「航空事故は複雑だから、たとえヒューマンエラーが絡んでいたとしても、よっぽど酷いミスでない限り私は誰も責められません。事故なんて起こしたくないのは皆同じだから」


 切実な表情で話すつぐみに深く共感する。あのときも、こういう意見がもっと広まっていれば、少しは状況が変わっていただろうか。
< 172 / 252 >

この作品をシェア

pagetop