俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
入籍した数日後には、すでに様々な方面に広まり始めているようだった。この日が地上勤務だったのもあり、オフィスで顔を合わせると祝福の声をかけてくる人がちらほらいる。
デスクでパソコンに向かっていると、ひとりのパイロットが近づいてくるのに気づき、内心ため息をつく。
「天澤、結婚おめでとう」
ぽんと肩を叩いて口角を上げるのは、最もウマの合わない真柴さんだ。と言っても、彼が一方的に敵対視しているだけで、別に俺が嫌っているわけではないのだが。
噂によれば、三十二歳で機長を目前としている俺が気に食わないらしい。本人だって三十七歳の若さで機長になっているのだから、十分素晴らしい活躍だというのに。
俺は彼を見上げ、社交辞令の挨拶を返す。
「ありがとうございます。皆、情報早いですね」
「そりゃあ、これまで女の影もなかったエリートコーパイが突然の結婚となればね。社内中に知れ渡るのも時間の問題だろ」
〝エリート〟の単語に嫌味が詰まっているのを感じつつも表情を変えずにいると、真柴さんは含みのある笑みを口元にだけ浮かべて上体を屈める。
「なにか裏があるんじゃないの? 本当に愛してるのか疑わしいんだよなぁ。つぐみちゃん可愛いし、うかうかしてるとほかの男に取られるかもしれないぞ」