俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
小声で囁かれ、キーボードを打つ手が止まった。
悔しいが、裏があるのは間違いではない。真柴さんはわりと鋭いのだ。でもそれより、つぐみが可愛いだの取られるだのと言われるのが不快で仕方ない。
表情がやや険しくなるのを自覚していると、彼は姿勢を戻して表向きの笑顔を作る。
「まあ、とにかくめでたいね。今度、結婚祝いを贈るよ」
「お気遣いなく。PFを担当させていただければ、それで結構です」
感情がこもっていない棒読みで答えると、真柴さんは一瞬目を丸くした。
PFというのはパイロットフライングの略で、操縦桿を握る人のこと。
真柴さんと組んで、俺がPFを任されたことは一度もない。おそらく、俺が離着陸の経験を積むのを阻むという、ささやかな嫌がらせなのだろう。
器の小さい人だなと呆れるが、俺も今みたいに嫌味で返してしまうからどっちもどっちなのかもしれない。
彼はぐにゃりと眉を歪め、面白くなさそうに「生意気なヤツ」と吐き捨ててその場を去っていく。
こういう態度は日常茶飯事なのでたいして気にならないが、先ほどの発言は別だ。頭に残るそれのせいでつぐみがほかの男のものになる様を想像してしまい、軽く頭を振って掻き消した。