俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】

 だんだん混乱してきて、落ち着いて考えなければいけないとわかっていても焦ってしまう。いつもならもっとスムーズにできるはずなのに、なんだか今日はうまくいかない。

 あくせくしながら対処すること数十分、担当の航空機からパイロットのやや固い声色が聞こえてくる。


『先ほど天候は問題ないとお聞きしましたが、二万八千フィートで激しい揺れに遭遇しました。飛行には問題ありませんが、不具合が発生しているので着陸後に点検をお願いします』


 それを聞いた瞬間、身体が硬直して血の気が引いた。

 天候に問題ないと伝えたのは間違いなく私。天気図を見ているだけではわからない突発的な強風が発生したのだろうが、そういった新しい情報は各空港や飛行中のパイロットから逐一届いている。それを見逃してしまったのも私だ。

 相手には見えないのに勢いよく頭を下げ、「申し訳ありません! 整備に伝えます」と必死に謝った。

 私の様子に気づいたらしく、別の業務にあたっていた美紅さんが真剣な面持ちで駆け寄る。


「なにか問題があった?」
「激しい揺れに遭って不具合が起こったと連絡が……。私がしっかり情報共有できていなかったんです。すみません」
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