俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「い、泉さ……」
「つぐみさん、泣かないで。あなたを奪いたくなってしまうから」
硬直する私の耳元で、感情をなんとか抑えているような声が響いた。まさか、と動揺する。
「僕は、最初はあなたに同情していた。生活のためとはいえ、千里の思惑が絡んだ結婚をすることになったのは気の毒なように思えて」
千里さんの思惑? その部分が引っかかり、胸がざわめく。
泉さんと千里さんだけが理解し合っている〝なにか〟があることには気づいていた。千里さんが結婚を決めた理由に、それが秘められているのだろうか。
やはり彼はなにかを隠しているのだと知って苦しくなりつつ、泉さんが続ける言葉に耳を傾ける。
「だから心配していたんだけど……少し気にしすぎてしまったかな。千里とのことで一喜一憂しているつぐみさんを見ていると、あいつが羨ましくなったよ。あなたにこんなに想われているなんて」
切なさが入り交じる声を紡がれ、複雑な心境で一杯になった。泉さんはずっと、単純な厚意で気にかけてくれているのだと思っていたから。
彼はゆっくり身体を離し、憂いを帯びた瞳で私を見下ろして微笑む。