俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「たぶん千里は、つぐみさんを大切に想っているはずなんだ。ふたりの気持ちをさらけ出してよく話し合えば、きっとお互いが納得する結論を出せるよ」
今もなお私たちの仲を取り持とうとしてくれる彼に、胸がじんとした。本当に、話し合えばこれからも一緒にいられるのだろうか。
潤む瞳で泉さんを見上げていると、彼の指が私の濡れた頬に触れようとする。そのとき、地面を踏みしめるかすかな音が聞こえた。
「……つぐみ?」
聞き慣れた男性の声が耳に届き、心臓がぎゅっと縮む感覚を覚える。泉さんの斜め後方に向けた私の視線が、その姿を捉えた。
「千里さん……!」
はっとして呟いた直後、彼はその場に荷物を置いたままこちらに近づいてきて、泉さんの肩を荒っぽく掴んで引き離した。真柴さんとの一件のとき以上に険しい顔をしていて、背中に冷や汗が伝う。
「どういうつもりだ、泉」
「見ての通りだよ。彼女がつらそうだったから放っておけなくてね」
ずれた眼鏡を押し上げる泉さんはこの状況下でも冷静で、挑発的な視線を向けている。千里さんは鋭さを増した瞳で彼を睨む。