俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
結婚を決めたのも、なにか別の理由があるんじゃないかと最初は疑っていた。まさかそれが、父への恨みからくるものだったなんて。
「利用して本当に悪かった」
潔く頭を下げる彼に、私は慌てて首を横に振る。
「いえ、私だって自分のために結婚を受け入れたので……千里さんがなにかを隠しているのは気づいていたし」
私たちはそれぞれに都合のいい理由があったのだからお互い様だ。決して騙されたわけでもない。ただ、父が絡んでいたことがショックなだけ。
しかし、まつ毛を伏せる彼の顔が痛切に歪む。
「大事な娘が愛のない結婚をすれば、父親としては苦痛だろうとも思った。なのに……妻としてひたむきに向き合おうとするお前が、いつの間にか俺にとっての大切な人になっていた」
ほんの少し優しい声色に変わり、胸が切なく締めつけられる。鼻の奥がツンとして痛い。
「初めて食事したときも、デートのときも、素直に愛しいと思ったよ。お前を悲しませたくないし、恨みなんて捨てようとした。真実は秘密にしたまま、自分の中で呑み込んでしまえばいいって何度も考えた」
「千里さん……」