俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
ブリーフィングルームから航空機まで移動する間も、暗雲が立ち込める空を見上げて呟いている。
「朝よりだいぶ天気が崩れてきたな。なるべく乱気流は避けたいんだが」
「今日はやけに揺れを気にしますね」
突っ込んでみると、彼は制帽のつばを持って珍しく歯切れ悪く返す。
「あー……この便に飛行機が苦手な子が乗るから」
「え?」
「車椅子の子、俺の妹なんだ」
予想外の事実に、俺は目を見張る。
「五年前、航空機事故に遭って足が不自由になった。副操縦士が操作を誤って着陸に失敗して負傷者を出した、あれだよ」
彼の冷ややかな表情と声が、俺の胸をざわめかせた。
その事故ももちろん覚えている。海外の航空会社ではあるが、この那覇空港にアプローチした際の事故だから。
内容は滑走路に尾部が激突してバランスを崩し、胴体部分を激しく損傷するというもの。死者が出なかったのは不幸中の幸いだ。
しかし、まさか真柴さんの妹が当事者だったとは……。
「ずっと飛行機は嫌がってたけど、明日は東京で友達の結婚式があるから行くことに決めたんだってさ。不安だからその便に俺も乗ってくれって頼まれて、無理言ってスケジュール組んでもらった」