俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
妹の話をしているときの彼の表情はどこか柔らかい。普段あまり見ないその様子から、妹を大事に思っているのが窺えた。
そんな大切な家族が障害を負ってしまったのだ、とてもやりきれないだろう。今回のフライトで神経質になっているのも、妹を心配しているからだとわかる。
「……納得しました。いつも以上に揺れを気にしているのも、俺が目の敵にされている理由も」
父のインシデントとは違い、この事故の原因は副操縦士のヒューマンエラーだと最初からはっきりしていた。真柴さんがそこに敵意を向けるのは当然と言えば当然だし、同じ副操縦士である俺が気に食わないことにも関係しているのだろう。
彼は俺を一瞥して苦笑を浮かべる。
「あのときの副操縦士も若くして機長目前だと言われていたらしいから、天澤を重ねて見ちまうんだろうな。まったくの別人なのに……。まあ、お前の性格は普通にイラつくんだけど」
最後の言葉に俺が目を据わらせると、彼は嫌味のない自然な笑いをこぼした。そして伏し目がちになり、自嘲気味に言う。