俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
胸を撫で下ろしていたとき、背後に人の気配を感じた。
「うまくいったみたいね」
「お母さん」
振り返ると、いつの間にいたのか母が微笑ましげにリビングのほうを眺めている。母にも千里さんたちの話が聞こえていただろうか。
「私も安心したわ。つぐみを愛してくれているのはもちろん、お父さんも受け入れてもらえてよかった」
母は眉を下げつつも、同じく安堵した様子だ。もしかしたら、記事の件で悩んでいた父を知っていたのかもしれない。
私も向かい合うふたりを見つめ、これから家族としていい関係を築いていけるよう切に願った。
それから少しお茶をして、空が夕日で染まる頃に実家をあとにした。
終盤では父の顔にも笑みが戻っていたのでほっとした。もう十分反省しているはずだが、今後は慎重に正しい記事を書いてほしい。
帰りの車内では、千里さんに『お前、盗み聞きするならもっと上手にやれよ』と呆れた調子で言われた。どうやら彼から私は丸見えだったらしい。
まあ、隠れなければいけないのを忘れてふたりの様子に集中していたから、バレて当然だろう。