俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
でも、私が聞いているのを承知で『つぐみを愛したから』と言ってくれたのは嬉しい。あのときの言葉は全部、建前などではないとわかっているから。
幸せな気分でマンションの部屋に帰ってくると、気が抜けた私たちは脱力してソファに座った。リビングの大きな窓からは、沈んだ夕日が名残惜しそうに空を橙色に染めている。
触れ合った指をどちらからともなく絡めたとき、千里さんがぽつりと呟く。
「……これでやっと気持ちに整理がついた」
隣に目を向けると、彼の迷いのない瞳も私を捉える。
「つぐみ、終わりにしよう」
次いで告げられたひと言は、すぐには理解できなかった。まさか、と最悪の展開がよぎり、「え……?」と戸惑いと不安に満ちた声が漏れる。
しかし千里さんは、言葉とは裏腹な甘い笑みを浮かべて私の頬に手を添える。
「契約夫婦は終わらせて、ただの夫婦になろう。利害なんて関係ない。愛しているって理由さえあればいい」
彼の意図がわかり、私は目を丸くした。
終わりって、そういう意味? もしや、この間玲香さんに言っていたのもそう?
千里さんはあのときから、契約夫婦というドライな関係に終止符を打とうとしていたんじゃ……。