俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】

 しばし別世界のような夜景に見惚れながら、私は先ほどからずっと気になっていることについて尋ねてみる。


「あの、天澤さんの結婚するメリットってなんですか?」


 彼は窓の向こうを見るともなしに眺めたまま、おもむろに口を開く。


「気のない女に誘われるのも、三十過ぎてから『結婚はまだか?』とやたら聞かれるようになったのにもうんざりしていた。本当に結婚してしまえばその煩わしさもなくなる。単純に、家事をやってくれる人がいるのも助かるしな」


 どうやら天澤さんも他人からの干渉に困っていたらしい。この話しぶりからすると、やっぱり恋人はいないのだろう。引く手数多だろうに。


「天澤さんほどの人に彼女がいないのが不思議です」

「恋愛に割く時間がもったいないし、結婚する気もなかったからだよ。パイロットの仕事に理解のある人でなければ無理だし、目ぼしい人がいたとしてもそいつのご機嫌取りして恋人になってプロポーズ……なんてステップを踏むのは面倒でしかない」

「世の女性を完全に敵に回してますね」


 ざくばらんな彼に、私は口の端を引きつらせた。この人、きっと〝普通の〟結婚には向いていない……。
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