俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
天澤さんはおもむろに歩きだし、グレーのベルベットのソファに悠々と腰かけた。手持ち無沙汰になってしまった私も、微妙な距離を空けて隣に座る。これから妻になるのなら変な遠慮はいらないだろうし、気持ちを落ち着けたい。
部屋を見回すと、間接照明や観葉植物がオシャレでセンスがある。ここが彼のテリトリーなのか……。
〝どうでもいいヤツを家に上げていると思われたくない〟という発言からして、この部屋に足を踏み入れたのはきっと限られた人だけなのだろう。自分がとても稀有な存在に思えてくる。
「私たち、本当に結婚するんですよね……」
確認の意味も込めて呟くと、天澤さんの整った眉がぴくりと上がる。
「嫌なら今すぐ出ていってくれ」
「滅相もございません!」
彼の冷めた口調に食い気味に返した。結婚をためらっているわけじゃないのだ。ただ現実味がないだけで。
でも、さすがに一生を添い遂げることにはならないだろう。私はしばらく居候させてもらえればいいのだし、天澤さんだって周りの人たちに干渉されなくなったらしれっとお別れする気でいるかもしれない。
利害を重視した結婚にはルールが必須だし、その辺りははっきりしておこう。