俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】

 これまで何度もレベルの高い男性との浮き名を流してきたらしく、中には略奪愛もあったとか。どれも結婚には至らなかったようだが、恋愛に対してそこまでタフなのはもはや尊敬する。

 美紅さんは据わった目でパリパリと漬物を噛み砕いている。


「それほど魅力的な男に彼女がいないとは思えないけど」
「大丈夫、彼女がいないのはリサーチ済み。万が一いたとしても、結婚さえしていなければまだワンチャンあるわよ」


 ひぇ~さすが肉食! ていうか、一応結婚を約束している相手がここにいるんですけれども……。

 めちゃくちゃ気まずく、内心冷や汗を掻いて目を泳がせていたとき、美紅さんが私たちの後方を見て「あ、噂をすれば」と呟く。

 宮路さんと同時に振り返った私は、ドキリと心臓が跳ねた。制服姿の天澤さんが、すぐ後ろにあるテーブル席にひとり座るところだったから。食後のコーヒーだろうか、カップだけを持っている。

 これはさらに気まずい。彼はおそらく私には気づいていないだろうから、そっと前を向いてお味噌汁に口をつけた。
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