俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
天澤さんたちが乗るロンドンからの便が到着する頃には、羽田空港が暴風域から外れる予報なのでそこまで影響は受けなそうだが、油断はできない。
あれこれ考えているうちに待っていた信号が青に変わり、天気予報を見ていたスマホをしまって歩き出した。しばらくして、洗練された広いアプローチが見えてくる。
そこに到着し、同じく中へ入ろうとしていた住人らしき男性の顔をなにげなく見たとき、私は目を見開いた。私に気づいた彼も、眼鏡の奥の瞳を丸くする。
「あなたは……」
「この間の!」
同時に声を上げ、ふたりして噴き出した。
見目麗しいスーツ姿の彼は、以前駅で会った管制官だったのだ。天澤さんが『マンションには航空関係者が何人か住んでいる』と言っていたが、その中に彼も含まれているのかもしれない。
偶然の再会に内心テンションが上がり、私は風でやや乱れた髪を手で直してはにかむ。
「まさかこんなところで会うなんて」
「驚きましたね。蒼麻つぐみさん、でしたっけ」
顔と名前を覚えていてくれた!と、宮路さんと同じように感激しながら頷く。