俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
徐々に目線が落ちて表情が暗くなっていく私に、しっかり耳を傾けてくれていた泉さんが眼鏡を押し上げて親身な声を投げかける。
「婚姻届を出していない今なら、まだ引き返せます。あなただけが我慢するような契約なら、破棄したほうがいい」
ごもっともな意見が胸に刺さる。彼の言う通り、数日後には入籍する予定なので白紙にするなら今のうちだが、本当にそのほうがいいのか、すぐには答えは出せない。
「そう、ですよね……。よく考えてみます」
「すみません、勝手なことを」
決まりが悪そうに謝る彼に、私は慌てて首を横に振った。誰かに話を聞いてもらえたのは初めてだから、それだけでも気持ちが軽くなった。
泉さんは腕時計に目をやってからおもむろに腰を上げ、私を安堵させるように笑みを向ける。
「またなにか悩んだり、心配事があったら相談に乗りますよ。もちろん、千里も一緒に皆で食事するのもいいですね」
「はい、ぜひ! 私も管制官のお話を聞いてみたいと思っていたんです」
「シビアな話ばかりですが、それでよければいくらでも」
社交辞令だとしても嬉しくて、気分が少し明るくなった。