俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
──その日の晩、夢を見た。遠く離れた異国の地から、天澤さんが電話をかけてくる夢。
なにを話したかはほとんど覚えていないが、ひとつだけ頭に残っているフレーズがある。しかし、あの彼が絶対言わなそうなセリフなのがまさに夢という感じだ。
電話口で聞く声は不思議と優しかったし、すごく心地よくて妙にリアルだった。
目覚めてはっとした私は真っ先にスマホの画面を見たが、着信の通知は残っていない。願望が夢となって現れたか……と肩を落とす。しかし、今日は雑念を振り払わなければ。
昨夜はあのあとも悩んでいたのだが、結局納得のいく答えは出せそうになかったので、早く寝てしまえとアルコール度数高めの梅酒を一杯だけ飲んだ。それがちょうどよかったのか、気持ちのいい眠りにつけたから身体はわりとスッキリしている。
ベッドから降りてカーテンを開け、窓を打ちつける雨と暗い雲を見て気合いを入れた。
出社した航務課内は予想通り台風の影響で慌ただしく、無線の音声が飛び交っていた。すでに国内便もいくつか欠航が決まっており、各部署でその対応に追われている。