俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
時刻は昨夜の十時四十分。いつもなら起きているのに、なんで昨日に限って早々と寝てしまったんだ……もったいない!
でも、夢じゃなかった。泉さんでさえ『フライトに出れば連絡も寄越さない』と言っていたのに彼のほうからかけてきたなんて、かなりレアな事態じゃないか。
電話に出ても寝ぼけて覚えていないなら意味がないけれど。そりゃあ、朝見ても通知はないわけだ。
肩を落とし、当たった景品を受け取り損ねたような、とても残念な気分で謝る。
「すみません、せっかくかけてくれたのに。用件はなんだったんですか?」
問いかけると、天澤さんは数秒の間を置いて口を開く。
「〝から揚げが美味かった〟って、それだけ」
まったく予想外の内容が淡々と返ってきて、私は目をしばたたかせた。
から揚げって、数日前に私が作ったもののことだよね? 美味かった? そうか、美味かったのか……。
そのひと言を噛みしめると無性に嬉しくなって、だらしなく緩む口元に慌てて手を当てた。
天澤さんのお墨つきをもらえたからってだけじゃない。彼が素直な一面を見せてくれたことも嬉しいし、可愛いなと思ってしまったのだ。